「正月・・・・特に何もなかったな」
「そだねー。クリフのじいちゃんが餅を詰まらせて掃除機ッ―――!」
□ビュンと風を切り、コタツに頬杖をついていたヴィーの頭めがけて、大鎌が振り下ろされる。□ヴィーはそれを背中からニョキリと生やした腕で受け止めると、振り下ろした本人であるテスタメントを半眼で睨みながら、
「を喉に突っ込む・とかいうこともなかったし」
□なかった・に力を込めていうヴィーに、テスタメントは冷めた目を向けながら、
「嘘回想しようとするな」
「お前が早合点したんだろうが、さっさと武器をしまえ・・・!」
□睨み合いながらも、テスタメントは武器をしまい、ヴィーは背中の腕を元に戻した。□コタツの上の蜜柑を手に取り、外の皮を剥いて二つに分けながら、ヴィーはやれやれ・と呻いた。
「お前新年明けるってそんなに良いもんだと思ってんの?」
□テスタメントは一瞬意味が判らない・といいたげな顔で首を傾げたが、分けた蜜柑をいっぺんに口に放り込んだヴィーは、
「聖戦中の元日って良いもんだった?」
□はぁ・と大きな溜め息一つ。□テスタメントもなにやら思い出したらしく、顔色が悪くなる。
「聖戦・・・・人とギアの戦いだな、ギアは人を全て滅ぼすことが勝利・・・だった」
「・・・・・はぁ」
「新年明けてまず一発目が、ジャスティスに怒られるんだよ?何でまだ人間が生きてるんだ・って。俺達の力の方が絶対人間より勝ってるのに!!細菌かウィルス並みのしぶとさで生きて、聖戦がまだ続くってジャスティスが怒るんだよ?」
「・・・・あ・・・あぁ・・・・」
「存在する理由も果たせず云々と・・・しまいにゃいってるジャスティスもちょっと凹んでたみたいだしさ、人を殺せないギアの価値疑うんじゃ、指揮するジャスティスだって同じだし」
□あ〜ぁ・と呻いたヴィーは、コタツに顎を乗せて唇を尖らせ、
「人を滅ぼし終わった後、年が明ける・っていうのを経験してたらまだ新年も喜べただろうけど、俺新年全然嬉しくなーい」
「餅でも食え」
□テスタメントは焼けた餅をヴィーに突き出すと、ヴィーはわーいとあっさりと頬を綻ばせて、餅に齧り付いた。□磯辺焼きとはまたジャパニーズ被れているが、クリフ知恵である。□御節もクリフ指導でテスタメントが作った。
「正月は・・・・・テスタメントが少し太ったかな」
「!!失礼なことをいうな!!」
□ヴィーの指摘に、顔を紅くしたテスタメントだったが、
「そうじゃのぅ」
「父上まで何をいわれるのです!?」
□コタツで寝ていたクリフの唐突な言葉に、今度は青くする。□忙しい。
「餅の食い過ぎだろうな」
「いっておくが、二人の方がずっと食べているからな!」
「死んだ俺らがいくら食ったって太るわけないじゃん、幽霊だもん。ねぇ〜」
□とクリフに同意を求めるヴィー。□クリフも苦笑いを浮かべながら、そうじゃな・と頷いた。
「こういう時だけずるいじゃないか!!」
□テスタメントの悔しげな声が響いた。