「ジャスティスの部屋にもおこた置こうよ〜」
「おこた?」
いつものようにジャスティスの部屋に上がりこんでいたヴィー。読書をしていたジャスティスだったが、ディズィーの突然の訪問に、ジャスティスは今話し相手をしていた。その横で声を上げたのだ。その声にジャスティスは、ゆっくりとした動作でヴィーを見ると、小さく首を捻る。
「炬燵!クリフじいちゃんの部屋にはあるの!」
「あぁ・・・テーブルにお布団がついているものですよね」
「炬燵・・・・ジャパニーズの暖房器具、か。私にはそんなもの必要ない」
「ジャパニーズのだから?」
「暖房器具がまず不要だ」
「俺は寒いよ・・・」
「ギアならば体温調節すれば問題ないレベルの筈だが?南極の極寒の中でも活動できる筈だ」
ジャスティスはそういって眼を細めた。ヴィーは体を強張らせ、
「俺がところどころ不完全なギアなのは判るけど!せっかく冬なんだし炬燵あった方が風流っていうか」
「風流など・・・・意味を知っていっているのか?」
「いや、よく判んないけど」
案の定首を横に振ったヴィーに、ジャスティスはやれやれと溜め息をついた。
「大体この部屋にそんなものを置いては余計狭くなる、邪魔なだけだ」
「えぇー!?ねぇねぇディズィ〜」
ぶぅ・と不満そうに口をすぼめたヴィーだったが、何かを思いついたのか、ジャスティスの隣で苦笑していたディズィーを呼んだ。ディズィーは何ですか?と首を傾げながらヴィーの元にいくと、ヴィーはにやりと笑って耳打ちした。
「?」
その様子を見ていたジャスティスは、不穏なものを感じて微かに体を強張らせて身構えた。ディズィーの顔に浮かんだのは、小さな驚きと、
「お母さん、私も炬燵・・・」
少し恥ずかしそうに頬を染め、気まずいのか何か気負うものがあるのか、何度か視線をそらせながら、ディズィーはもじもじと申し出た。
「寒いのか?ならば今法術で―――」
指先にチロリと小さな炎を点らせたジャスティスだったが、ディズィーは力一杯首を横に振った。
「いえッ・・・炬燵が良いんです!」
「きちんとコントロールすれば部屋を燃やすこともないし、暖をとるくらい法術で」
ディズィーがそこまで強くいう意味が判らず、ジャスティスは当惑したが、ディズィーの反応に嬉しそうな顔をしているヴィーを見て、ジャスティスの目がヒタリと冷たい光を湛えた。
「ヴィー・・・ディズィーに何をいった?」
ジャスティスに睨まれたヴィーはギクリと体を強張らせたが、首を横に振り、
「大したこといってないよ」
「質問が理解できなかったか?何をいった・と聞いたのだ、いったことを答えればよい!」
ガシリと頭を捕まえられたヴィーは、すぐさま締め上げられて悲鳴を上げた。慌てたディズィーが腰を上げようとしたのをジャスティスは手で制すと、ヴィーの目を覗き込み、
「答えろ」
「・・・・・ぁぃ」
その返事に満足してジャスティスが手を離すと、ヴィーは正座をして、
「おこたに並んで入るのって仲良し母子って感じで良いよね・って」
「・・・・・・」
ヴィーの言葉に、ジャスティスは暫し停止し、ディズィーは恥ずかしそうに頬を赤らめた。ジャスティスは眉間を人差し指で押さえて暫し黙考した後、
「ディズィーを使うな」
ビュッと風を切る音と共に振り下ろされた手刀は、確実にヴィーの頭のてっぺんを捕らえた。

「んでね、ジャスティスは普通の炬燵じゃ狭いじゃん!だから掘り炬燵が良いと思うの」
「狭いと最初から判っていて何故炬燵を提案した・・・・・いや、それよりも掘り炬燵というのは、この部屋では使えまい」
手刀で額がぱっくりと割れたのか、頭巾の下から眉間・鼻と伝い落ちる血をそのままに、ヴィーはニコニコと笑っていた。それにジャスティスは呆れながら話を聞いていたが、掘り炬燵・という言葉に何を馬鹿な・と首を振った。
「此処は二階なのだぞ?掘り下げるわけにはいくまい」
「良いじゃん別に。下に住んでる奴なんて暗い部屋の隅で体育座って“すまない”とかぶつぶついってる寂しい奴なんだし、ちょっとくらい天井下がっても問題ないよ」
それに・とヴィーはいいにくそうにしながらも言葉を続ける。
「そんな・・・ジャスティスが近所のこと気にするなんて・・・キャラじゃないでしょ?」
「確かにな」
といいながらも、またヴィーの頭に手刀が降った。

結局、置くタイプの掘り炬燵があるとのことだったが、狭い・というジャスティスの鶴の一声で流れ、クリフから火鉢を譲り受けてヴィーが餅を焼いた。

「今度またディズィーを利用としたら・・・・判っているな」
「ぁぃ・・・」
□後書き
我が家のジャスティスさんは炬燵に入ってくれないようです。ちぇー。

ディズィーに協力を下手に仰ごうとすると、怒られること判明。少し言葉が乱暴でしたが、まぁジャスティスはそういった意味でいったんですよ。