□すまない・と下げられた白い頭、赤い髪がさらさらと背中から流れ落ちる。□下げられた本人は、困惑した様子でふるふると首を振った。
「頭を上げて下さい、お母さん」
「・・・しかし、牢内で時間の把握が困難とはいえ・・・その、判らないと答えるしか出来ないのは・・」
□すまん・と重ねて謝るジャスティスに、ディズィーは良いんです・と微笑う。
「今の私の誕生日は12月25日ですから」
「拾われた・・・日か」
「出会えたことは私には喜びです、その後別れがあったとしても」
□ギュとジャスティスの手を握り締めてディズィーは微笑い、ジャスティスはそうか・と頷いた。□彼女が被ったであろう痛み、悲しみ、憎しみ全てはジャスティスが与えたも同じ。□それでも、ディズィーは出会いを喜ぶことを選んだ。
□出会いが娘を光の元に連れ出した。□自分には与えられなかった・与えることも出来なかったであろうものを得た娘に、ジャスティスはやんわりとその頭を撫でた。
「生まれてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう」
□強くなったな・と微かな声で囁き、ジャスティスは眼を細めた。
「嬉しいです、お母さんからも祝ってもらえるなんて」
「泣くの・・・か」
「私・・・一人でずっと泣いてたから・・知らなかったんですけど。嬉しくてもね、涙って出るんですよ?お母さん」
□涙を滲ませていたディズィーは、それを拭うことはせず、むしろ誇らしげに微笑った。□その笑顔に、今娘が幸せだと十分知ることが出来た。
□ギュウとジャスティスの体に細い腕を回して抱きしめるディズィー、その頭を撫でるジャスティスの目は柔らかい光を湛える。
□この身で願うは更に罪深いと知りながら、ジャスティスは、彼女と喜びを分かち合う者との出会いと、それが続く幸せが娘の上に降ることを願った。
「ディズィー、今日は・・・その・・・」
□テスタメントは準備していた祝いの料理をテーブルに運びながら、ジャスティスに抱きついたままのディズィーに、おずおずと尋ねる。
「誰かに・・・何というか・・誘われたりはしなかったのか?」
「・・はい?お母さんのところに来たかったので、クルーの皆がして下さるといっていたお祝いのパーティは昼にしてもらいました」
□満面の笑顔で答えるディズィーに、テスタメントはそうか・とだけ呟いた。□テスタメントの歯切れの悪い物言いに、ヴィーとクリフは首を傾げる。
「今日はここにお泊りします!」
「もう向こうにはそういってあるのか?」
「はい!」
□良いですよね?と訊ねるディズィーに、ジャスティスは頭を撫でて答えた。□嬉しそうなディズィーを見ていたテスタメントはやれやれ・と溜め息を一つつく。
「どしたん?」
「いや・・・進まなかったなぁ・・と。誕生日であり聖夜である今夜・・・てっきり誘ったかと思っていたのだが」
□まだそういう仲ではなかったか・とテスタメントは自分の中で納得させると、料理のとりわけを始めた。