「教えてもらったんだけど、とても美味しいチョコレートなのよ」
ふふ・嬉しそうにそういう女、機嫌良く微笑うのを見るのは悪い気分ではない。 が、そんなことは顔には出さず、ふぅん・と気のない返事をすると、女は箱からチョコを一つ取り、それを口に入れた。 美味しい・と頬を緩めると、
「甘いものがあまり好きじゃないのは知っているけど、これはそんなに甘くないと思うし」
はい・とチョコの箱を差し出されたが、一瞥しただけで手を出さずに、テーブルに置いてあった自分のコーヒーを一口飲む。 一口大といっても、好きではない身からすればそのチョコは大きく、口に入れたときの甘ったるさを想像すると、手は出ない。 差し出したまま待っていた女だったが、痺れを切らしたのかまた一つ手に取り、はい・とこちらに手を伸ばした。 隣り合って座っていて、伸ばされた手は自分の口へと向けられている、微かに頬が熱くなるのを感じながら体を強張らせた。 この女のことだから他意などなくて、自分で取らないから・ということなのだろうとは判っているのだが。 強引に口に突っ込もうとしないだけ良いのかもしれない・と思ったが、女は動かない自分を不思議そうに見ている。
自分だけこう慌てるのは少し不公平な気がして、マグカップをテーブルに置くと女の細い手首を掴み、グイ・と引いた。 突然のことにバランスを崩した女の肩を捕まえ、何かをいおうとしていたのを遮って唇を重ねた。ほんのりとオレンジの味がするチョコなのか・と思った瞬間、自分でしたことながら頬に熱が上る。 掴んだ女の手が震え、解放すると何かをいいたげな目で見上げられた。
「十分甘い」
甘いものが好きな人間には甘くないかもしれないが、得意でない人間には十分に甘いチョコの味に、素直に感想をいうと、
「・・・気に入ってもらえると思ったのに」
残念・と小さく唸って唇を尖らせるその所作は、少し幼く見える。 全く照れた様子のない女は、一度自分の前に置いてある紅茶のカップに目を向けた後、持っていたチョコレートを自分で食べた。 それを横目にマグカップに手を伸ばし、
「不味くはないんじゃないか」
オレンジとチョコは合うらしくその組み合わせは少なくない・くらいは知っている。 コーヒーを飲みながらいうと、紅茶を飲んでいた女は本当?と嬉しそうに微笑い、
「紅茶も良いけれど、やっぱりコーヒーの方が合うと思ったの」
得意げにいう女に、そうか・と頷こうとして動きを止めた。 自分の口を押さえ、熱い顔を見られないように女から逸らした。 女は特にその様子を気にせず、良かった・と上機嫌に微笑っていた。
□後書き
2を書いている時点で此処まで書くつもりではあった、けどどんどん長くなっていくのに、自分で軽く引いてた。(馬鹿)
一番最初に書いたアリアよりはだいぶ可愛さが増したと思うんですが。 そうでもないですか? 一応・・・可愛いタイプの女性だったのかな?と思って意識的に変えてみたのですよ。 ジャスティスブログにアリア見たい人来ないと思うんですけどね。(爆)

フレデリックってもっと押せ押せのイメージですか?・・・よく判らん。 でも樽が書く女の人は大概鈍いので、男側から押さないと関係進まねぇ。

あと、違うやつもあったんですけど、見たい人いるのかな? なんかフレデリックが強気だったというか・・・・最初は部屋のイメージだったのに、これを休憩室でしてたら笑える・と思った瞬間、このオチないわー・ということに。
でも、火男は枯れてるイメージがある。(失礼)