「ほら!凄いだろ、これ動くんだよ」
□ふふん・と自慢げに胸を張り、眼鏡をかけた男はそれを指差した。□指先でつつくと、くすぐったそうにピコピコと動いた。
「ただ着けるだけじゃつまらないからさぁ、感覚神経つないであるからこういう動きするわけ」
□ほらほら・となおもつつくと、嫌そうな顔をするのだが、それでも逃げずに辛抱強く我慢している。□それを見ていた二人は、なんという無駄なことを・と思いながら、あえて口には出さなかった。
「あと折角着けたからさ、尻尾も変えちゃった」
□後ろ向いて・という男の言葉に従い、座っていた状態から少し腰を浮かせて膝を立てると、その場でくるりと回る。□普段は長く装甲に包まれた尻尾があるところには小さな丸い尻尾。
「耳とお揃いでウサギの尻尾にしてみた」
「お揃いは判るが、何故あえてする!?」
□とうとう堪えきれずに一人が声を上げた。□隣の男も呆れた顔で、眼鏡の男を見ている。□えー・と眼鏡の男は不満げな声を上げ、
「耳だけつけて尻尾を普段通りじゃ変じゃないか」
「そういうことをいっているんじゃなくて」
□何を当たり前のことを・といった感じでいった眼鏡の男に、長髪の男は裏手で空を突っ込みながら、
「まず、なんでコピーにウサギの耳をつけようとしたんだ」
「・・・似合うと思ったからだけど」
□二人の反応が芳しくないことに、眼鏡の男はがっかりしたようだった。□判らないかなぁ・と首を捻っている。
「もともとある角が耳みたいなんだしー」
「でも角だろ」
□同じように長髪だが、後ろで一つに括った男は冷ややかな目で眼鏡の男を見ながら、にべもなくそういった。□眼鏡の男は自分のコピーを振り返ると、
「似合わないって」
□その言葉に、コピーはへちょり・と頭を垂れると、耳も同様にひょこん・と伏せた。□似合わないという言葉に少し傷ついたように見えたが、
「こういう動きもするんだ、可愛くない!?」
□悪いこといったか・と思っていた気持ちは、得意満面でウサ耳を指差す眼鏡の男の言葉に吹っ飛んだ。□もともと何かを付け替えて形を変えるというのが好きではなかった長髪の男は、渋面を作って一言。
「下らん」
「ウサギ好きじゃない?猫とかが良い?それとも犬?犬だったら尻尾振るよねー、喜んだ時とか。それもいいか」
「勝手にしろ・・・」
□パーツを作るのが楽しいのだろうとは思うが、全く理解できないそれに、長髪の男は口を出すことを止めた。□それまで黙っていた髪を括った男はぼそりと、
「・・・・その耳って痛覚あるのか?」
「え?何?興味出た?つか、それでまず口から出る言葉が痛覚って気持ち悪いね、君」
「お前にだけはいわれたくない」
「耳自体は千切れても痛くないはずだけど、くっついてる部分はダメだ。本体からの神経と接合してる部分が切れたらそれは痛いからね。何?なんかつけたいのあるの?」
「もともと角に神経通ってたってことかと思っただけだ」
「あぁ〜・・・・まぁ・・・叩いたくらいじゃなんともないけど、折られたら痛いんじゃないかな」
「つまり痛い上に角が折れてるという間抜けな状態になるんだな」
□そういって振り返った先には紅い装甲のコピー、他のコピーと一緒になにやら話している。□ウサギコピーの耳を興味ありげにつついていた。
「一番叱るのに効果がある屈辱的なのを探してる・・・・またヤサぶっ壊しやがった・・・」
□苦々しげに呻いたその言葉に、眼鏡の男はそれは大変だったねぇ・といいながら、暫し考え込み、
「僕がこういうこというのもなんだけど、ウサ耳つけさせれば良いんじゃない?君んちの子とか絶対嫌がりそうじゃん」
「俺も嫌だ・・・そんなの連れて歩くのは」
「・・・・」