□細く・長く・鋭利な指。大切なものに触れるには不向きな指。
自分のそんな指を見下ろし、ジャスティスはぎゅっと手を握りしめた。
硬い装甲に包まれた自分を裂くことは流石に容易ではない。
全てが自分ほどなら、こうまで躊躇うことはすまい。
□時を凍結させた小さなカプセルを視界に収めて、小さく呼ぶ。
名前はまだ付けていないというのに・・・
そばにいた中級ギアにカプセルを持ってくるように命じると、ギアは恭しくジャスティスの前に持ってきた。
「これから私はモスクワに向かう、隠れてその子を守れ」
□そういいながら、目の前のカプセルを覗き込む。
半透明のカプセルの中に半濁の液体が満ちていて更にその中にうっすらと赤ん坊の影が見えた。
カプセルを指でやんわりとなぞると、きぃと小さな音が響く。
「決して人の手には渡さぬように」
□ジャスティスの命令にギアはカプセルを抱き上げると一礼してその場を後にする。
それを見送った後、ジャスティスは組んでいた足を解いて立ち上がると、法力を展開し、その場から掻き消えた。
□帰ってきたら名前をつけよう
この戦いが終われば、自分達が生物として生きていける世界になるはず
そうすればあの子を安心して出すことが出来る
自分が創造主に名を与えられたように、自分も与えよう
□そうすることが、自分が兵器でしかないということを否定出来るもののような気がした。