「ジャスティス」
□呼びかけたのは他愛ない理由だった・といっても、今となっては判然としないのは未だに混乱しているからだろうか。
「なんだ?」
□テスタメントの呼びかけに、ジャスティスは読んでいた本を閉じると、テスタメントの方に向き直った。□ジャスティスの金の目は真っ直ぐにテスタメントの赤い目を見据え、そこでテスタメントは固まってしまった。□ジャスティスはテスタメントが口を開くのをじっと待つが、竦んだようにテスタメントは動かない。
「テスタメント?」
□訝しんだジャスティスがテスタメントを呼ぶと、テスタメントはギクリと体を強張らせ、
「ッ!申し訳ありません・・・・何でも・・・ありません!」
□頭を下げたテスタメントは、すぐにその場から身を翻すと、クリフの部屋へと駆けて行った。□その後ろ姿を見送ったジャスティスは、読みかけていた本に一度目を落とした後、はぁ・と小さく溜め息をついた。
「蛇に睨まれた蛙・というのはあぁいったのをいうのだろうな」
□ギアは解放した、にも拘らず好き好んで以前のように努めようとする人型ギアの理解しがたさ。□好きにしろ・といった返事があぁなのだから、それ以上口を出しようはない。□ジャスティスは続きを読む気にもなれず、本をテーブルの上におくと、目を閉じた。
□ジャスティスは、話す時は相手の目を見ながら・というのが多い。□敵味方といわずに、相手を見据え逸らさずにいる。□だから先刻のも、いってしまえば今までと同じ通りなのだが。
「・・・・・」
□確かにジャスティスの視線は鋭さがあるが、決して睨まれたと思ったわけではない。□だが、目が合った瞬間、なぜか緊張して話しかけた理由が頭から吹き飛んだ。□みっともなくも慌て、逃げ出してきてしまったのだが、
「どうかしたのかテスタメント?」
□薄っすらと額に汗をかき、壁に向かって正座したまま眉間に皺を寄せた息子に、クリフが心配そうに声をかける。□テスタメントは、大丈夫です・と答えるが、自分が犯した失態に頭を痛ませた。
「はぁ・・・・」