「ジャスティスー!ジャスティスの名前どう書くか教えてー?」
本を読んでいたジャスティスに、そういって声をかけたのはヴィー。
「俺自分の名前は書けるようになったんだよ!次は大好きなジャスティスの名前かけるようになりたいから」
テスタメントに教えられ、だいぶ文字が読めるようになって来たヴィーは今度は書き取りの練習を始めていた。学ぼうとする姿勢を見せ始めていたことに、少しは感心していたジャスティスは、少し付き合おうか・と本を閉じた。ヴィーがすでに紙に書いていた名前を見て、本当の意味を思うと顔が曇りそうになるが、それを飲み下し、
「お前の名前のつづりはたった三文字・・・しかも文字も二種だけでは」
「うん。V・I・Iだから簡単だったー。ジャスティスの難しい?」
はい・とペンを手渡されたジャスティスは、此処に書いて・といわれた場所に名前を書こうとして、手を止めた。その紙にはすでに枠のようなものが印刷されていて、ジャスティスの名前を書けといわれたのはどうやら署名のところらしい。
「これは何処で手に入れた?」
「え!?・・・・と・・・」
「どういったものか判っていて私に書かせようとしたのか?」
ジャスティスの声に滲む不穏な空気を察して逃げようとしたヴィーだったが、あっさりとジャスティスの尻尾が細い腰に巻きつき、掴まる。ギリと力を込められ、ヴィーはすぐに涙を零した。
「痛い痛い痛い!!」
「答えられないのか?」
ジャスティスの手でグシャリと音を立てて紙が握り潰され、ヴィーはあぁ!と小さな声を上げた。
「ジャスティスとずっと一緒にいられるおまじないの紙っていわれた!」
「では何故そうといって名前を書かせようとしなかった、お前は私に嘘をついたんだぞ」
「嘘いってないもん、本当のこといわなかっただけで!ジャスティスの名前は練習するつもりだし、ジャスティスとずっと一緒にいたいからっていったら、ジャスティス書いてくれないと思ったんだもん!」
何処でそんな知恵をつけたんだ・といいそうになって、ジャスティスはヴィーが齢百に達するほどのギアだったことを思い出した。子供のような喋り方と外見で、テスタメントもたまに失念する。知識がないだけで、知恵だけならもともとある・・・良くない部類が多かったのだが。
「誰が貴様にこんなものを渡したんだ!」
「知らない人ー」
「テスタメントが知らない人間からものを貰うなといっていたのを忘れたのか?」
「お菓子じゃなかったから良いのかと思った・・・ついていったわけじゃないし」
「・・・・とりあえず、これではない紙に書いてやる」
「ちぇー」
「本当に意味は知らないんだな?」
「うん・・・・ジャスティスがそんなに怒るものならもらわなければ良かった・・・」
シュンと肩を落としてしょげたヴィーに、ジャスティスははぁ・と溜め息をつくと、持っていたペンをくるりと回した。
「大体これは戸籍があるところでは有効だが国によってはないし、同性も認められていない場合もある。なにより死んだ我々には関係ないではないか」
「この紙って何なの?」
「お前は知らなくて良い」
手の中の婚姻届を燃やして灰にすると、ジャスティスはヴィーが持ってきた無地の紙に自分の名前を書いた。それを見たヴィーはありがとう・と笑顔でいうと、その紙を胸に抱いて部屋を飛び出した。壁の向こうからクリフに「飾るからこの枠と同じのくれ」と恐らく額縁か何かをせがむ声が聞こえる。
とりあえずジャスティスは、ヴィーに要らないものを与え、様子を窺っているであろうその人物のところに向かった。
□後書き
「ジャスティスは俺の嫁!」とか宣言できないチキンです。カップリング一押し企画のようになっていて、「○○は俺の嫁」という用途で使っている人少なッ!
ジャスティスのサインをゲットするには、紙をそのまま出したらまず無理でしょうね・・・。寸分違わずジャスティスの筆跡で書けるように練習するしかないな。

ヴィーが意味を知らないのは本当です、結婚というのも判ってないと思う。ジャスティスが好きなのは家族的な意味が強いので。他人と一緒にいるにはいる届けだけど、家族だから。