そのギアは名前を呼び、力なくひどく緩慢な動きで右手を伸ばした。 鋭い切っ先のような指先にぼんやりとした光が点る。 それを見た男が顔を強張らせ、武器を握っていた腕に力を込めたのか微かに震える。
 殆ど表情など読み取れない仮面のような顔、唯一判る目が微かに悲しげに曇り、ゆっくりと言葉を続けた。 言葉の途中で男は驚いた表情を浮かべ、弾かれるように前に一歩踏み出し、伸ばされた手を掴もうと自分も手を伸ばす。 だが、言葉を終えたと同時に、糸の切れた人形のように伸ばされた手は体と共に地面へと頽れた。 男は膝をついて掴めなかった手を握り締めた。 微かな温かさがじわりと伝わり、光が何だったのかを知る。
 男はもう動かないギアを見下ろして言葉をかけると、身を翻してその場を去った。
□後書き この時のジャスティスの心情(ばっちり樽の妄想ですよ)だけを書いたものを別にアップするつもりで、なるたけ感情は書かないようにした一品。
故に、こんな判りにくいものになったわけですよ。
法術って万能だし、傷治すのも法術で出来そうじゃない?とだけいってみる。