「あッ!そこのお兄さん!」
少し間延びしたような声が聞こえ、ソルが振り向こうとした瞬間、
「ッ・・・・!」
堪えきれずに吹き出し、
「あ――――はははははははははは!」
笑い声が響いた。その場にいた呼び止めたブリジットが、細い肩をびくりと震わせ、どうしたものかとソルの顔を見る。ソルも一瞬無視して続けようかと思ったが、その笑い声は一応は抑えようと努力しているらしいが、終わる様子はない。
「ちょっと待ってろ」
低い声でそういうと、ソルは笑い声の方―舞台袖―へと歩いていく。
「てめェ・・・何がそんなにおかしいんだ・・・」
ドスのきいた声に鋭い眼差しによる威圧感、普通に人間ならばすぐにでも逃げ出しそうなプレッシャーの中、声の主は未だに笑っていた。
「ッ・・・おかしくないことがあるのか?くく・・くっく・・!まぁ、気にするな・・・・抑えようとはしているんだが・・・お・・お兄さんとは・・・・はっはっは!」
そこにいたのは出番待ちをしていたカイとポチョムキン、そして大声で笑うジャスティスとそれに寄り添うように立つディズィー。
「お母さん、それは少し笑い過ぎですよ」
といっているディズィーの顔にも微妙なものが浮かんでいる。
「すまないディズィー、だが・・・自分の出ていない・・・部分の台本など見て・・・いなかったから・・・な。・・・・ふははははは!」
本来なら笑っている相手に謝るべき筈なのだが、ジャスティスは隣にいるディズィーに謝った。全くソルの方には目もくれない。腹を押さえてくっくっく・と笑いを抑えようとして喉が鳴る。しまいには抑えきれずに結局笑い声を上げた。
「いい加減笑うのを止めやがれ!あと後ろでこそこそ笑ってる坊やと鈍いのもだ!大体ディズィーは出番ねぇだろ、何で此処にいるんだ」
ソルの言葉に、ジャスティスの後ろでジャスティスほどではないのだが、必死に笑いを噛み殺そうとしていた男二人は、頬を引きつらせながらソルから顔を背けた。笑うジャスティスの傍で申し訳なさそうに立っていたディズィーは、
「こういう時じゃないと一緒にいられませんから」
ふふ・と笑顔でいう。ソルは開きかけた口を閉じたのだが、
「あはははははははは!長生きすると面白いものが見られる・ということか」
それは楽しそうに笑うジャスティスに、額に青筋を浮かべた。
「死んでるだろうがてめェ・・・」
「・・・・殺した貴様がそういう言い方をするのか?」
そういったジャスティスの目に悲しげなものが過ぎり、口が滑ったか・とソルが僅かに慌てる。ディズィーも肩を落としたジャスティスを見て、形のよい眉を寄せて少し冷ややかな目をソルに向け、
「ひどいです」
「・・・あ・・・すまん」
と、ソルが気まずげにディズィーから目を背けながら呻いたが、ディズィーの後ろではジャスティスがにやりと笑っていて、それを見たソルはまたしても青筋を浮かべた。だが文句をいう前に、ジャスティスはそれを制するように手を上げて、
「まぁ仕方あるまい。それにしてもどこかの馬鹿な人間が私のコピーなぞ作るから、今回は二役やらねばならなくなったわ」
不満げに呻いた後、ディズィーの頭にぽんと手を置くと撫でながら、
「すまなかったな・・・・」
あとであの人間はなます切りだ・と物騒なことをいうジャスティスに、ディズィーは私は大丈夫です・とパタパタと手を振る。それを見ていたソルはジャスティスを半眼で睨みながら、噛み付くように、
「何でディズィーには謝れるのに、俺には謝らねぇんだてめェは・・・!」
その言葉に、ジャスティスは馬鹿にしたような目で見下ろしながら、ふんと鼻を鳴らした。
「何をいっている、私が何を謝る必要があるというのだ?」
「今!現在進行形で邪魔してるだろうが・・・!」
「無視してさっさと進めれば良いだろうが」
馬鹿め・というとあっちへ行け・と払うように手を振った。ぞんざいなジャスティスの態度に、ソルの頬が引きつった。
「てめェを伸して黙らせるっていう手もあるんだがな!」
吼えるソルに呼応するように封炎剣から炎が立ち上り、それを見たジャスティスは面白そうに眼を細めた。
「私は構わんぞ、やれるものならやってみろ」
「あのー・・・うちも進めないと次の人が待っていてですねー」
ホワンと間延びした声がソルの背後からかかり、あぁ?と振り向いたソルの視線の鋭さに、泣きそうな顔をしてごめんなさい・とブリジットは縮こまった。
「どうせ私の出番まではまだある・・・・こんなところで聖騎士団の人間と待っているのもつまらない、私は控え室に戻る」
興が殺がれた・というとジャスティスはさっさとその場から立ち去り、慌ててディズィーもその後を追いかけていってしまった。苛々とした雰囲気を振りまくソルを置いていかれ、その場のカイとポチョムキン、ブリジットははぁ・と溜め息をついた。
□後書き
 ストーリーモードは皆さんが台本どおりに台詞をいっているちょっとした小芝居だと思っています!(オイ)

 御大とか「AC+」の公式絵描きさんとか、ソルを一体幾つだと思って描いているんでしょうか? 私にはとても「お兄さん」には見えないのですが・・・・新しくなって声の渋さが増した所為で特に。 「お兄さん」には激しく吹いたわ!
 笑って許される(平気という意味)のってジャスティスくらいだな・と思って、あと堂々と(ソルを怖がらずに)笑えるのも。
 なんか・・・記憶が戻っているんだか戻っていないんだか判らないジャスティスになってしまった気がする。 どっちが面白いかなー。 仲良し母子だと良いですよね!(ぇ
 あ・・・でも「お兄さん」と呼ばれるなんてお前幾つだよ・と笑っているんだったら実年齢知ってることになるから・・・思い出しているのか。