床に腰を下ろし、ゆるく足を組み、深く俯いたまま動かない。背に負った窓から日を受けて、ジャスティスは深く眠っているようだった。傍に置かれたちゃぶ台には読み終わったらしい本が栞と共に置かれている。
「・・・・」
ノックも呼びかけもせずにドアを開けて上がりこんだ訪問者は、寝ているジャスティスを前に固まった。気配でいることは判っていた、いきなり開ければ小言の一つ位いわれるだろうが、相手も自分が近付いてきていることに気付いていると思ってしたのだ。が、寝ているばかりか、部屋に上がっても気付かないくらいに寝こけている。
「死んだからって気が緩み過ぎだろうが・・・」
やれやれ・と呻いて、小脇に抱えていた数冊の本をちゃぶ台に置く。部屋を見渡して、先に貸した本を捜したが、読み終わっているかどうかは聞かなければ判別出来ない。起こすのも忍びないか・と一瞬考えたが、ふと先頃のことを思い出した。
「・・・・」
ちゃぶ台の上に置かれた本の題を見ていたソルは黙ってジャスティスの傍に膝をつくと、起きる様子がないことを確認し、
「―――のレポート形式違いで再提出、後―――の締め切りが―――」
ゴニョゴニョと何事かを耳打ちすると、ジャスティスは嫌な夢でも見始めたか、微かに魘された様な声を上げた。ビクリと体を微かに震わせ、唸るジャスティスに、ソルは満足したように頷いた。


「・・・・おかしな夢を見た・・・」
夕飯を作りに来たテスタメントが、ジャスティスの様子がおかしいとしつこく訊ねるので、ジャスティスは渋々答えた。
「夢見が良くなかったのですか?聖戦下でも魘されていることはありましたが・・・」
「それとは違う夢だ」
きっぱりと・だが苦々しく答えたジャスティスは、ちゃぶ台に置かれていた本に目を留めた。栞を乗せた本の題名に目を落とし、夢に出てきた内容を考えてそれの所為か・と思ったジャスティスだったが、その隣へと目を向けて、
「・・・!少し・・・出て来る」
「判りました」
夕方に出かけるというのも珍しい・と思ったテスタメントだったが、あえて口には出さずに、送り出した。ちゃぶ台に置かれた本を部屋の隅に置かれた棚の上に置きながら、
「ん?・・また違う本・・・」
棚の上にすでにあった本と、新しい本を見比べて、テスタメントは首を捻った。
□後書き 軽い茶目っ気です、樽の

すいません。ジャスティスの素体がアリアじゃないと成り立たないんですけど、だからって甘い話にはならないみたいです、樽の場合。嫌がらせてお前・みたいな。

さらっと書きましたけど、ジャスティス聖戦中の夢見って悪そうだな・と。自分が殺した人の顔全部覚えているといわれてもあまり驚きません。覚えようと思って覚えているわけでなく、見た風景の一つとしてただ頭に記憶されているだけ・なイメージですが。後悔も懺悔もしないイメージなので、ただ寝ている間映像が繰り返されてぐっすり眠れる状況じゃねぇよ・ってだけ。
あと、ジャスティスにとって昔(素体の時)を思い出すのは、きっぱりと「嫌なこと」に分類されていると大変萌える。口酸っぱくなる位いってますけど樽は変態です。思い出したからって、その頃に立ち帰れないだろう!と思っているので、ジャスティスはジャスティスというギアであり続けてくれると嬉しいです、ひどい話ですが。
忘れていたからといって、かつての恋人を「この手で殺す」といい、憎しみのような感情滾らせて殺す気で戦って、記憶戻ってまた昔にあっさり帰る・って出来たらすごい神経だと思います。(無印エンディング見るとしそうですけどね、何だ「三人で」って。あの台詞が未だに解釈悩むわ。)あれですか?あの三人は常人には理解できないくらい深く繋がった友情関係なんでしょうか、あっさりと許せるというか・・・理解できるような?すげぇな、それ。